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宝石の加熱処理

無処理で美しい宝石は大変稀少で手に入れるのがなかなか難しいものです。
需要が多くても全ての人の手に渡るのはほぼ不可能と言えます。
その不足分を少しでも補うため、自然のままでは見劣りする石に対して人が手を加えることがあります。それが処理(トリートメント)です。
加熱処理もその方法の1つで人工的に熱を加え色や透明度の改善を目指します。
仕上がりは温度・時間・雰囲気を調整することである程度コントロール出来ます。
加熱処理と言えばやはりルビーやサファイアですが今回は比較的簡単に出来る低温で色の変わる石を紹介させていただきます。
(写真の石は当店店長が加熱処理を行ったものです。)


アクアマリン

左:未加熱のグリーンベリル
右:グリーンベリルを加熱して作り出したアクアマリン
グリーン(ブルー+イエロー)を加熱することによりイエローの発色が消失します。


タンザナイト(ブルーゾイサイト)

ブラウンの部分:未加熱のブラウンゾイサイト
ブルーの部分:ブラウンゾイサイトを加熱して作り出したブルーゾイサイト
写真は同じ原石の右半分のみを加熱したもので色の変化は含有されるバナジウムの変化によるもの。非加熱のタンザナイトにはカット後も茶色い部分が残る場合があり非加熱の判断材料として利用出来ます。余談ですがピンクゾイサイトは高温で加熱すると無色になってしまいます。ブルーを更に高温で加熱する無色になるそうですが自分で試したところ無色は作れませんでした。


インペリアルトパーズ

左:未加熱のインペリアルトパーズ
右:インペリアルトパーズを加熱して作り出したピンクトパーズ
加熱することによりイエローが抜けピンクが残ります。


ジルコン

左:未加熱のブラウンジルコン
中央・右:ブラウンジルコンを加熱して作り出したゴールデンとライトイエロー
スリランカ産のブラウンジルコンはアルコールランプで炙る程度の加熱でゴールデンジルコンになります。加熱し過ぎると色が抜け無色に近くなります。


カラーリバースジルコン

左:未加熱のグリーンジルコン
右:グリーンジルコンを加熱して作り出したカラーリバースジルコン
スリランカ産のグリーンジルコンを加熱してもこの様な変化はありません。


パライバトルマリン

パライバトリマリンの加熱 ブラジル産
地色がバイオレットでマンガンにより赤味を帯びたパライバトルマリンを徐々に加熱してみました。最初にマンガンに起因する赤色が飛び銅に起因する青色が残ります。この状態ではあまり綺麗ではないので更に加熱するとイエローの要素が加わりパライバカラーに変わりました。
通常のグリーントルマリンの発色である鉄も絡んで来ると思いましたがED-XRFにて成分分析をしたところ鉄とチタンは検出されませんでした。後日、モザンビーク産でも試したところ無色や灰緑の石をイエローやネオンイエローグリーンにする事に成功しましたが個体差がある様で一部は色が抜けて灰色になってしまいました。

ED-XRFによる分析結果(上記ステップ)
MnO(マンガン)=1.0968wt%
CuO(銅)=2.2437wt%
マンガンに比べ銅が多いことが分かります。典型的な”パライバカラー”になる石です。



グリーン系パライバトリマリンの加熱 ブラジル産
左:未加熱のパライバの原石
右:加熱により得たグリーン系のパライバ
ブルー系よりマンガンが多い石です。
加熱し過ぎるとグリーン(イエロー)が強くなり過ぎる場合があります。



グリーンになったパライバトルマリン ブラジル産
左:非加熱のパライバトルマリン
右:左に近い色味の石を加熱し過ぎた結果
加熱によりイエローグリーンになってしまったパライバトルマリンです。

ED-XRFによる分析結果(上記ラウンド)
MnO(マンガン)=3.1149wt%
CuO(銅)=2.5468wt%
この系統の石は未加熱の状態では青く見えますが成分分析にかけてみると銅に比べてマンガンがかなり多いことが分かります。



非加熱の状態で綺麗に発色したブルー系のパライバトルマリン ブラジル産
加熱により得ることが出来るパライバ(カラーの)トリマリンですが全てが加熱と言う訳ではありません。
写真はブルーの強い非加熱のパライバトルマリンです。綺麗なネオン発色です。
ちなみに原石はブルーとパープルのバイカラーでした。

ED-XRFによる分析結果(上記オーバル)
MnO(マンガン)=0.3504wt%
CuO(銅)=2.0779wt%
ブルーの強い石は銅が多くマンガンが非常に少ないことが分かります。



加熱された含銅トルマリン モザンビーク産
加熱処理されたモザンビーク産の含銅(未分析なので多分)トリマリンです。
銅に比べてマンガンが多く完全にイエローグリーンに発色したと思われるものも見受けられます。
青いものもありますがパライバトルマリンと言うよりは色の薄いアクアマリンの様です。 (後日、ED-XRFにて分析して頂いたところ、銅が検出されました。)



パライバトルマリンの様な色味の鉄発色のトルマリン アフガニスタン産
こちらは銅を含まない石ですがパライバトルマリンの様な発色です。
銅は含まれていなくても前述のモザンビーク産よりもパライバらしい色味ではないでしょうか?


実験程度ですが実際に加熱処理を行ってみると宝石が生まれる環境は非常にシビアなものであることが分かります。美しい非加熱無処理の石が稀少であることを改めて実感しました。(店長)